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本物であること - 続編

ヨーロッパのサッカークラブにとって、一番大切なコンテンツは何だかわかりますか?はい、トップチームですね。では、育成ってどうでしょうか?

レストランに置き換えるとわかりやすいかもしれません。あなたがヨーロッパでレストランを経営していると考えて下さい。

一番大切なコンテンツは・・・「料理」です。そして、育成は・・・・「自家製農園、農場でつくる食材」と考えてください。

「自家製の食材」をつかって、レストランで「料理」をつくり、たくさんのお客さんに食べてもらってそのおいしさを証明し、「自家製の食材」を他のレストランに高く売る

それが、育成に力を入れているチームが行っていることですね。

前述しましたが、レストランで一番大切なのは「料理」です。「料理」を目当てにお客さんがやってきてお金を支払ってくれます。おいしい料理をつくるために、食材はどうしましょうか?自家製がいいですか?市場で買ってきたものがいいですか?それは、どういうレストランだということを宣伝文句にするかで異なりますね。

「自家製の食材を使ったおいしい料理」にひかれる客もいるし、「マーケットで最高の素材をつかったおいしい料理」にひかれる客もいるでしょう。経営者としては、どういうお客さんを相手にするかで、宣伝文句と料理を考えますよね。

さて、そんなレストランに、「自家製農園に入れてください。とびっきりのおいしい野菜になります」といって、野菜のことを知っているか知らない外国人が売り込みにきたら、あなたがレストランの経営者ならどうしますか?「いらない」と言ったら、「じゃ、お金を払いますから、自家製農園に入れてください。おいしくならなかったら捨てても構いませんから」と言ってきました。

あなたが経営者なら、もらえる金額次第、または、この外国人がだれか大切な友達の紹介なら考えるかもしれませんね。仮に農園に入れて一年間育てたとしても、おいしく食べられるかどうか、シェフが考える献立に使えるかどうか、最終的にはシェフに判断をゆだねなければなりませんが。

レストラン側の対応が経営者なら上の通りです。自家製農園といっても、広さや育てるスタッフの手間も限られます。おいしく育つか、そして食材として献立に合うかどうかわからないものをたくさん植えるわけにはいきませんね。

でも、このレストラン側の対応が、あまり給料が安い自家製農園の担当者だったらどうなりますか?

担当者:「いらない。場所がないから」

外国人:「「じゃ、お金を払いますから、自家製農園に入れてください。おいしくならなかったら捨てても構いませんから・・・」

担当者: 「じゃ、端の方に植えて帰ってくれていいよ。で、お金はいくらくれるの?」

外国人:「1000円お支払します。で、次の野菜も受け入れてもらえますか?その時もお金はお支払しますので。勿論、おいしくなかったり、ちゃんと育たなかったら捨ててください」

担当者:「いいよ、つぎは場所を少し広げておくので、植えてあげるから持っておいで」

外国人は、自国に戻って、野菜作りをしている農家に言います。

「ヨーロッパの有名店の自家製農園にあなたの作る苗木や種を入れてあげますよ。あの有名なレストランで使われる食材ということで宣伝になりますから、一本につき10000円支払ってください。これがみんなに知れ渡れば、あなたの野菜は飛ぶように売れますよ!」

レストランは、自分が商売しているヨーロッパではない、遠く離れた外国で、野菜を売るために自分のレストランの名前が使われていることを知りません。もし、知ったとしてもそれをどう扱うでしょうか?ブランドが傷つくからといってその外国の野菜農園に話をしに行きますか?あなたが経営者ならどうでしょうか?

残念ながら、これが、ヨーロッパのクラブと日本の育成で行われていることではないかと思います。

サッカークラブにとって、どういう食材なのかわかりやすいのは、南米、アフリカ人です。日本人は、よくわからない不思議な食材です。でも、自家製農園担当者は、喜んで受け入れてくれますよ。お金がなくて生活に困っていますから。

レストランだと野菜だからいいですが、サッカーに置き換えると、野菜はあなたの大切な子供になります。一番、大切なのは農園=育成チームに入れてもらうことではなく、料理になること=つまり、トップチームでゲームにでることです。

それができるレストランをつくること、農園をつくること、正しく育てること、が本物であることだと、切に思います。

 

 

 

 

 

 

Makotoコーチのサバデル通信 3月3日

CEサバデルでは、2週間に1回、指導者を育成するためにコーチへの講習会が行われています。スペインの他のクラブと日本のサッカークラブで、積極的に指導者を育成しているチームがどのくらいあるかわからないですが、サバデルでは、組織(チーム)を成功に導くためにやるべきことの一つとして、指導者の育成を重要視しています。部下(コーチ)の育成でコーチの質を向上させれば、その結果として、選手も効率良く上達するはずという考えです。

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CEサバデルの育成部門では、年間を通じたトレーニングプログラムを採用しています。指導者が通年のトレーニングの全体像、および個々のトレーニングの意図を理解していなければ、このプログラムの意味がなくなってしまうということもあり、育成部門の責任者であるJaver Perez氏が講師として、約一時間の講習を定期的に実施しています。

今回の指導者講習テーマはトレーニングプランニングで主に1日のトレーニングのプランニングについて講義がありました。

サバデルジュニアカテゴリーのトレーニングは、テーマに沿って基本的に3つのセッションに分かれています。

1つ目のセッションでは個人能力(個人技術、個人戦術、コーディネーション)、2つ目のセッションは少人数でのグループ戦術、そして、前回のサバデル通信でお伝えしたトレーニングは2つ目のトレーニングの内容が多く含まれていることがわかりました。ターンやストップ、ダッシュを繰り返すことが多く、瞬発的な負荷がかかり、プレーがどんどん展開されていくので、心理的な負荷が大きいトレーニングでした。

3つ目のトレーニングは2つ目のトレーニングをよりゲームに近い形に発展させ、実際の試合の中でどのタイミングでどの様に活用していくかを考えさせる様に設定されています。サバデルのトレーニングは、90分の練習時間をテーマが異なる3つのセッションで分割して実施されています。さらに、それぞれのセッションごとに年間を通じたトレーニングプログラムが組まれています。

こうした年間を通じたトレーニング計画を作成することで、昨年の今日、どんなトレーニングを実施していたか、そして、シーズンを終えた時点でどこが良くなり、どこが改善できていないかを分析しています。年間を通じたトレーニング計画と、その結果を常に分析して改善点を明確化することで、チーム及び選手の課題に特化したトレーニングプログラムを作成し、何年も継続して選手を育成することで、プロとして通用する選手の育成を実現しているのです。

講義の最後に育成部門の責任者であるJaver Perez氏は育成でもっとも大切なことは「Aprender y Entrenar  (学ぶこと そして トレー二ングすること)!」という言葉で講義を終えました。

このような取り組みが、CEサバデルのカンテラからすばらしい選手だけでなく、すばらしい指導者を生み出し、CEサバデル独自のスタイルを確立していくのだと思います。

本物であること

2012年末の紅白歌合戦で美輪明宏さんがうたった「ヨイトマケの唄」ってご存知ですか?昭和40年(1965年)に発されて、47年後の紅白でうたったことで再び、その歌のよさが認識されています。

美輪さんは、「本当にいいものは、時代を超えて受け入れられる」と話しているそうです。

なるほどなぁ・・・

本物であることの大切さを再度、認識しました。 え、なぜ、E+Uと「本物であること」が関係があるかわからない? そりゃそうですね。

2013年は、いくつかのヨーロッパ名門クラブが日本に常設校を開設したり、サッカークリニックを開催することが発表されています。香川選手のマンU移籍、長友のインテルでの活躍、クラブワールドカップで優勝したチェルシー等々、なにかと日本市場がヨーロッパの名門クラブの話題に関心を示していることが理由でしょうが、ヨーロッパのクラブにとって、日本でスクールやキャンプを開催する意図、また、どういう形でそれがクラブに持ち込まれて実現するか・・・ 考えたことはありますか?

ヨーロッパのクラブが日本の小学生を優秀な素材として見ているでしょうか?バルセロナがメッシを13才の時にスペインに連れて行ったように、日本人の小学生からダイヤの原石を探していると思いますか?仮にそんな原石をみつけたとしても、海外生活に馴染めるか?家族で移住できるか?収入は?体が予想ほど大きくならなかったら?怪我したら?それらのリスクを回避できたとしても、本当にクラブで通用する選手になるの? ???だらけですね。

クラブの経営をサポートしている我々から見ると、有名クラブとはいえ、そんなコストを日本の小学生にかけるクラブがあるとは思えません。メッシはアルゼンチンからスペインに移住しています。アルゼンチンはスペインの植民地で、スペイン語を話します。また、家族全員スペイン語を話せます。アルゼンチン人は、スペインで仕事を探すこともできます。あなたは、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリスに移住することになっても、仕事を探せますか?日本にいるように稼げますか?そうでない場合は、クラブは費用を負担しなければなりませんが、その金額はいったいいくらになるでしょうか?

以前、Jリーグのトライアウトのコラムを書きました。毎年100名以上のJリーガーが契約を更新できずに、引退していく状況です。1993年から20年の歴史あるJリーグですが、平均選手生活年数は6年程度なので、すくなく見積もっても100名 x 14年=1400人以上のJリーガーが第二の人生を歩んでいると考えられます。「元Jリーガーのサッカースクール」ってかつてはよく目にしたり聞いたりしませんでしたか?最近はどうでしょう?そういうスクールに子供を通わせている親御さんはどれくらいいますか?あまり、聞いたことが無いですよね?サッカースクールを職業にしていた人たちは、今、何を職業にしているのでしょう?

サッカースクールを育成ととらえるか、または体育の延長ととらえるか、どちらもありだと思います。ただ、子供のサッカーに対する思いと、親御さんの「できれば・・、もしかしたら・・・」の思いがあまりにも利用されていることが多い気がします。

日本のスクールを稼ぐ場所としてしかみていないヨーロッパのクラブは長続きしません。自クラブへ日本の子供を引き上げる実績が作れないからです。いくらなんでも、親御さんは馬鹿ではありません。そういうクラブは、どんどん人気がなくなり、質の低いトレーニングを提供して、消えていくでしょう。

だからこそ、「本物であること」が一番大切なんです。ぶれずに、しっかり目的にむかって歩を進めたいと思います。

10年後に我々のプログラムを経て、多くの子供たちがサバデル、そしてヨーロッパで活躍していることで、「本物であること」を実践したいと思います。

 

 

 

 

 

Makotoコーチのサバデル通信 2013年2月20日

2013年2月20日  「トレーニングの違い」

サバデルに合流して約1カ月、今まで在籍したチームや見てきたトレーニングとサバデルで行われているトレーニングは大きく異なっています。文字や図面だけで説明するのは難しいくらいサバデルのトレーニングはとても展開が早く、次から次にプレーが続くので、トレーニングが始まって4,5分はどういう約束事でトレーニングが行われているのか理解できないほどです。

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1つのプレーで3つ、または4つの必要なアクションが組まれており、選手たちは自分の役割がどんどん変わっていくことに対応しなければなりません。スペイン人のコーチは、選手たちに常に「cambio de chip( 頭の中のチップを変えるんだ)」と促します。

トレーニングでは、プレーが終わった後でもローテーションの順番が決まっています。誰かが間違えてしまうとそのトレーニング自体が成り立たなくなってしまうこともあります。確かに、サッカーの試合中、選手たちはパスを出したら次のポジションに正しく移動しなければなりません。そのポジショニングがゲームの展開に非常に重要であり、試合の結果を大きく左右します。たとえ、それがトレーニングであっても、選手たちはプレーが終わった後でも常に考えて行動しなければならないように考えられています。

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プレーしている選手、プレーが終わった選手、めまぐるしく変化する状況にすべての選手が集中していなければトレーニングを続けることができません。プレーの流れを読み取って、考えて、決断することをトレーニング中は常に要求され続けます。トレーニングの内容は、技術、戦術、フィジカル、認知力、集中力、システムや攻撃、守備のチームフィロソフィーで構成されており、コーチングスタッフのアイデアがたくさん組み込まれています。

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7,8才の子供たちが10年間このようなトレーニングを積み重ね、毎週末公式戦を戦い成長していったら・・・本当にすばらしい選手が育成できると感じます。日本の子供たちがCEサバデルの育成プログラムの中で成長したらどうなるのか、ぜひ日本のサッカー少年に体験してもらいたいと思います。

親離れ子離れ

子供をもつ親であれば一度は「親離れ子離れ」についてお考えになったことがあるのではないでしょうか?

赤ん坊のころは、両親とおじいちゃん、おばあちゃんが子供の世話を見ていました。子供からすれば、それが世界のすべて。保育園や幼稚園に行くようになり、お友達や先生、ママ友たちが子供に関係するようになりました。そして、小学校、中学校、高校と進むにつれ、学校のみならず、クラブや先輩、そして近所の大人たちも子供に関与するようになりますね。子供の立場からするとどんどん世界が広がっていくのがよくわかりますね。

さて、親の立場からするとどうでしょう。赤ん坊のころは、かたときも目を離すことができませんでしたが、高校生の子供とは、まる一日顔をあわせない日もあるのでは?

つまり、子供の成長にあわせて、親から子供が離れていくということですね。親が子供を離さない場合、「箱入り娘」「箱入り息子」のできあがりでしょうか。つまり、タイミングよく親離れ、子離れしないと、いつまで面倒みるんだ?という話になりかねませんね。

なぜ、この話をするのかというと、子供のスペイン留学の相談を受ける際に、我々がいつも考えることだからです。

いつが親離れ、子離れするタイミングだと思いますか?

義務教育を終え、高校、大学と通わせるなら、高校卒業するとき、大学卒業するときがタイミングかもしれません。世が戦国時代なら、16才で元服ですから、16才で大人として親離れ、子離れをしなければなりませんでした。

ではサッカーでヨーロッパで戦える選手になるには?いつがタイミングなんでしょうか?

我々は中学生になるときがタイミングではないかと思います。

ただ、誤解がないようにお話しますが、「親離れ子離れ」の問題と「独立する」ということは同義語ではありません。

12才はまだ子供です。適切なサポートが必要な年齢です。子供がヨーロッパで戦えるサッカー選手を目指すのであれば、あくまで「親離れ子離れ」のタイミングが早いだけで、親に変わる第三者が、本来子供が両親から受けるであろうサポートを提供すればいいのです。

親としては、子供が自分の目が届くところから遠くにいくこと、手の届く距離にいないことはとても不安で、耐え難いことかもしれません。ただ、いつかはそのタイミングが必ずやってきます。

ご両親に変わって、ホームスティ先の両親、そして我々の現地スタッフがあるときは兄弟になり、あるときは親戚のお兄さんになることで、子供に必用なサポートは提供されます。両親のもとで得られない経験や学習をたくさんすることでしょう。「親離れ子離れ」のタイミングの考え方さえ理解いただければ、子供が手元にいないという不安と引き換えに、スペインに留学しているからこそ代わりに得るものがたくさんあり、そのなかで、そこでしか得られない唯一なものはサッカーをとりまく環境なのです。

真剣に留学を考えて、悩んでいらっしゃるご両親に、我々は「悩むよりまず、現地に足を運んでみて、ご自身の目で環境を確かめる」ことをお勧めします。立ち止まっているだけでは何も解決しません。まず、第一歩を踏み出すことをお勧めします。