月別アーカイブ: 2013年2月

Makotoコーチのサバデル通信 2013年2月20日

2013年2月20日  「トレーニングの違い」

サバデルに合流して約1カ月、今まで在籍したチームや見てきたトレーニングとサバデルで行われているトレーニングは大きく異なっています。文字や図面だけで説明するのは難しいくらいサバデルのトレーニングはとても展開が早く、次から次にプレーが続くので、トレーニングが始まって4,5分はどういう約束事でトレーニングが行われているのか理解できないほどです。

018

 

1つのプレーで3つ、または4つの必要なアクションが組まれており、選手たちは自分の役割がどんどん変わっていくことに対応しなければなりません。スペイン人のコーチは、選手たちに常に「cambio de chip( 頭の中のチップを変えるんだ)」と促します。

トレーニングでは、プレーが終わった後でもローテーションの順番が決まっています。誰かが間違えてしまうとそのトレーニング自体が成り立たなくなってしまうこともあります。確かに、サッカーの試合中、選手たちはパスを出したら次のポジションに正しく移動しなければなりません。そのポジショニングがゲームの展開に非常に重要であり、試合の結果を大きく左右します。たとえ、それがトレーニングであっても、選手たちはプレーが終わった後でも常に考えて行動しなければならないように考えられています。

015    

プレーしている選手、プレーが終わった選手、めまぐるしく変化する状況にすべての選手が集中していなければトレーニングを続けることができません。プレーの流れを読み取って、考えて、決断することをトレーニング中は常に要求され続けます。トレーニングの内容は、技術、戦術、フィジカル、認知力、集中力、システムや攻撃、守備のチームフィロソフィーで構成されており、コーチングスタッフのアイデアがたくさん組み込まれています。

008011012

7,8才の子供たちが10年間このようなトレーニングを積み重ね、毎週末公式戦を戦い成長していったら・・・本当にすばらしい選手が育成できると感じます。日本の子供たちがCEサバデルの育成プログラムの中で成長したらどうなるのか、ぜひ日本のサッカー少年に体験してもらいたいと思います。

独記者が宇佐美の将来に疑問符 「このままでは完全移籍は困難」

サッカーキングに表題の記事が掲載されています。

宇佐美選手の語学力についての記事で、

「“言葉の問題”によりベンチ入りすらかなわない時期も経験した。
今冬にマルコ・クルツが監督に就任したことで、再び出場機会を得るようになった宇佐美だが、グリューナー氏は「好不調の波が激しく、信頼を置ききれない」と指摘。宇佐美の語学力が十分ではないため、周囲と満足なコミュニケーションを取れないことが飛躍の妨げになっているとの見解を示した。」(記事抜粋)

とあります。

Jリーグからブンデスリーグには、10名以上の日本人選手が渡っていますが、言葉の問題で苦労して活躍できない選手は少なくありません。実は、ブンデスリーグでは、「ピッチ上に通訳を入れるのは試合の雰囲気が乱れる」ということを理由に、良しとしないという習慣でした。

ところが、2010年にブンデスリーグ:ドルトムントに移籍した香川選手が言葉の問題を抱えていたことがきっかけで、当時のドルトムント監督:ユルゲン・クロップは、それまでの慣例に反して、通訳をピッチに入れることをよしとし、香川選手がパフォーマンスを発揮できる環境を整えました。

その後の香川選手の活躍は、みなさんがご存じのとおりで、ブンデスリーグでは、香川の件をきっかけに「コミュニケーションができない選手には通訳をつける」という流れができつつあるとのことです。

しかしながら、例えば、柏からハノーファーに移籍した酒井宏樹選手は、移籍直後には通訳がつきませんでした。そして、パフォーマンスが出ずに苦労していることについては、このブログでも取り上げたことがあります(こちらを参照)。おそらく、宇佐美選手にも通訳がついていないのではないかと思います。幸いかどうかわかりませんが、今年から、チームは酒井選手のために通訳をつけるようになったそうです。

では、宇佐美選手にも通訳をチームがつければいいという話になるでしょうか?チームにとっては、雰囲気の問題は別にしてもコストの問題があります。チームにとってはより、負担が増えますよね?それで、パフォーマンスが向上するという保証になるなら別ですが、パフォーマンスが上がらなければ、契約を解除する立派な理由になります。宇佐美選手の場合は、レンタル契約の解除ですね。

レンタルが解除された場合、宇佐美選手に興味を示すチームもあるでしょうが、ヨーロッパのチームにとっては「宇佐美選手は、言葉の問題でパフォーマンスが発揮できなかった選手」というレッテルがついています。それを払しょくするだけのパフォーマンスが必要になるのです。

通訳の準備というよりも、移籍前及び移籍後に適切な語学学習プログラムを受入の体制として準備しておくことが、クラブにとっても選手にとっても大切だと、また感じる記事です。

 

滝川第二FW木下の挑戦にWOWOWが密着

NIKEが企画したスカウトプロジェクト「THE CHANCE」にWOWOWが密着取材している内容が記事になっています。

実は我々がサポートするCEサバデルも、WOWOWさんと我々の関係から、イギリスで合流しています。さて、CEサバデルのスカウト達が、ここに参加している選手をどのように見るか楽しみです。もちろん、この記事の主役である木下選手にも注目してくれるように依頼しています。

NIKE側の取材規制がどの程度かわかりませんが、我々のスタッフからどういうレポートや写真が送付されてくるか楽しみです。

 

 

スペインという国

今日はスペインという国について、すこしご説明したいと思います。

みなさん、どれくらいスペインの事をご存知ですか?だいたいの感じをご理解いただくために、いくつかのデータを用意しました。

スペイン 韓国 日本
人口
(人)
45,989,016 29位
(2008年)
50,004,441 25位
(2012年)
126,659,683 10位
(2012年)
GDP
(PPPベース)
単位:ドル
1兆3968億 11位
(2008年)
1兆6220億 15位
(2012年)
5兆9840億 3位
(2012年)
面積
(km
2
504,782 100,210 377,914

これを見ていただくとだいたいイメージが沸きますか? 比較検討のために、参考に韓国のデータも記載しています。スペインは、

  • 人口は日本の約3分の1、韓国より10%少ない
  • GDP(国内で生産される付加価値の合計):日本の約23%、韓国より15%少ない
  • 国土は日本の1.3倍

GDPのデータはスペインが2008年、日本が2012年なので、恐らくヨーロッパの経済危機の問題から、2012年時点での数値比較は、もっと開いているかもしれませんが、そこを気にせずに要約すると

日本の人口の3分の1の国民が経済的には日本の4分の1の付加価値を生み出している国

とデータ的には言えます。そして、データ的には、とても韓国に非常に近しくみえませんか?

ヨーロッパの西に位置して、隣国と陸続きで接し、かつラテンの血をひくスペイン人を文化・歴史の面から考えてみたいと思います。

スペインはラテン民族に属し、歴史的背景をご紹介します。みなさんは「狩猟民族」と「農耕民族」という言葉をご存知かと思いますが、ヨーロッパやイスラムでいう「狩猟民族」の意味は、実は我々が理解している内容と大きく異なっていることをご存知ですか?私自身も、このことに気付いたのは、社会人になってすぐのころに読んだユダヤ人の歴史についての本がきっかけでした。何か、ご紹介できる資料がないかを考えていましたが、ちょうどイメージしやすいピッタリの内容があったので、アメリカ大陸を発見した「クリストファー・コロンブス」のリンクを貼っておきます。このコロンブスの中の「航海」の項目にある「新大陸上陸」及び「インディアンへの大虐殺」を参照いただければ、イメージがつかめると思います。

コロンブスは航海にでるにあたり、スペイン王室と「サンタ・フェ契約」を結んでいます。

1492年4月17日

  1. コロンブスは発見された土地の終身提督(アルーランテ)となり、この地位は相続される。
  2. コロンブスは発見された土地の副王(ピリレイ)及び総督(ゴベルナドール・ヘネラール)の任に就く。各地の統治者は3名の候補をコロンブスが推挙し、この中から選ばれる。
  3. 提督領から得られたすべての純益のうち10%はコロンブスの取り分とする。
  4. 提督領から得られた物品の交易において生じた紛争は、コロンブスが裁判権を持つ。
  5. コロンブスが今後行う航海において費用の1/8をコロンブスが負担する場合、利益の1/8をコロンブスの取り分とする

ここでいう利益には、物品だけではなく、奴隷も含まれています。

つまり、コロンブスは略奪を目的にこの航海に船出しているんです。そして、このコロンブスの航海の結果がスペインによる南アメリカ大陸全土(ブラジルはポルトガル領)の植民地化につながった事実を認識下さい。

ラテン文化を語弊を恐れずに極端に表現すると

「略奪による富を仲間で分配し、その報酬をお祭り騒ぎで喜べる人達。そして、細かいことは気にしない、なぜなら、その時々で、富の集まっているところを見つけて、奪ってしまえばいいから」

という根本的な考えが意識のどこかに残っているのではないかと思える経験がいくつかあります。日本人的考え方で、その出来事を理解しようとしても理解できるはずかありません。そのときには、極端かもしれませんが、「ラテン文化とは」と思い起こすことで、なぜ、そういう経験になったかを考えれば、それはそれで理解はできませんが、説明がつくのかなと思うことが何度もありました。

さて、どうして長々とこういう話をさせてもらったかというと

ヨーロッパで、スペインでサッカーをすることは、そういう文化に触れながら、そういう文化の人間とサッカーで戦う

ということだとご理解いただきたいからです。勿論、外から見るスペインと中から見るスペインとは違うと思います、2013年の現代ですから。ただ、サッカーの試合で戦う際は、スペイン人の狩猟民族としての「命を懸けた、勝利を奪い合う戦い」が前面に出てきます。なぜなら、彼等はサッカーをスポーツと呼びません。「サッカー」は「サッカー」という表現をするのです。体育=スポーツの延長線上にありません。ピッチの上は文字通り戦場と表現します。ある意味、ボクシングや格闘技のリングの上という意識が近いのかもしれませんね。やるかやられるかだと。

かといって、我々が狩猟民族になれるわけではありません。ただ、農耕民族の我々が、狩猟民族の特徴を理解してしっかりと準備をし、戦い方を工夫すれば、スペインに勝つことは絶対にできると思います。

最初のデータを思い出してください。スペインは、日本の人口の3分の1、GDPは4分の1以下の国です。まじめで勤勉な日本人が、しっかりと相手を研究し、そして準備をして努力をすれば勝てないわけはないと強く信じます。

だからこそ、日本人選手にヨーロッパで活躍してもらうために尽力したいと思いますし、きっと実現できると思います。

みなさんも、是非、そういう見方でリーガエスパニューラを見てみてください。夢が目標にかわります!

 

 

 

スペインへのテスト遠征

Jリーグの2012年シーズンが終了して、各チームが開幕前の最終調整にはいっているこの時期、実はさまざまなところから「スペインへのテスト遠征」の依頼をうけることが多くなっています。

2013年のプロ契約を更新してもらえずに、チームを探している選手、また、高校や大学ですこしでも早くプロ契約を勝ち取りたい、新学年を迎える前に、いろいろチャレンジしてみたいと考える選手・・・・、おのおのの事情はさまざまですが、相談をうける機会が増えています。

ただ、スペインのリーグは現在、2012-2013シーズンの後半戦です。正直、すぐに採用!となることはなかなかありません。

2013-2014シーズンに向けたテスト的な意味合いが強くなる遠征になると思います。

例えば、CEサバデルの場合、サイドバックの選手が昨年末、怪我で長期療養中です。明らかにチームとして選手層が薄くなっているため、戦力が低下していてすぐにでも補強したいのですが、

  • 怪我で療養中の選手の給与の支払いは継続しなければならない
  • 補強する選手の給与は、予定外の出費となる
  • 現在、スペインリーグで戦える資格があり(ビザの問題がなく)、かつ、どこのチームにも属していない(移籍、レンタルのウィンドウが閉じているので)フリーな選手を探して補強しなければならない
  • 外国人選手を補強する場合、給与、ビザの問題だけでなく、外国人枠の問題も考慮しなければならない

ことを頭に入れて検討しなければなりません。EU枠の選手であろうが、外国人選手であろうが、まずはこの2012-2013シーズン終わりまでの戦力という観点でどう補強するか、そして、3月‐6月までの4か月の契約でパフォーマンスをみながら、2013-2014シーズのチームにも引き続き残ってもらうかどうかを考えることになります。

相談を受けているみなさんには、是非、チャレンジできる機会を提供したいと思いますが、なかなかプロとして選手をつづけるにはたくさんのハードルがあることもご理解いただいて、納得のいくパフォーマンスを発揮していただきたいと思います。