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「永井が入団会見 通訳はGK川島」 を見て

2013年1月29日付で「永井が入団会見 通訳はGK川島」という記事がでています。

ベルギー1部リーグに所属する「スタンダール・リエージュ」というクラブへの入団会見ですが、すこしこのチームを違った側面から見てみたいと思います。

ベルギーという国はルクセンブルグ、オランダと共にベネルクス3国と呼ばれるヨーロッパの中心に位置する小国です。

人口は1060万人(2008年)。

ちなみに神奈川県:900万人(2010年)、東京都:1300万人(2010年)、日本は1億2800万人(2010年)

GDP:37兆2560億円(2010年:1ドル=80円換算)

ちなみに大阪府:37兆7650億円(2010年)、東京都:88兆6040億円、神奈川県:31兆34億円、埼玉県:20兆815億円

つまり、人口は東京都よりは少ないけど、神奈川県よりは少し多い。どのくらいの経済規模かというと大阪府と同じで、東京の42%の国のリーグです。

公用語はオランダ語(60%)、フランス語(39%)、ドイツ語(1%)

記事を読むとGK川島が英語で通訳をしたとのこと。

なんだか、疑問がたくさん湧いてきませんか?人口の観点からは神奈川県と同等、経済規模は大阪と同等の国のリーグ・・・ 語弊を恐れずに言えば、「神奈川県リーグに属する大阪の大きな会社のオーナーチーム」と言えなくはないでしょうか?

GK川島が英語で通訳?国内向けの記者会見だとしたらオランダ語かフランス語?いやいや、ヨーロッパだから英語は誰でも理解しているはず?かな? それとも、川島選手が英語が堪能なので通訳費用をケチった?川島選手と永井選手を同じ席にならべることで日本のマスコミ向けの会見にした?

チームの思惑が色々と見え隠れしている気がします。あなたが、ヨーロッパに遊びに行ったら、ベルギーに行くこともあるでしょう。ベルギーリーグで活躍する日本人トリオが出場する試合を観戦したいですか?観戦するのに、永井選手のユニフォームを買いますか?それとも小野選手?いやいや川島選手?ユニフォームは買わないまでも、じゃ、マグカップかキーフォルダーですか?

この2人の選手の獲得にチームは2億円支払ったと記事にありましたが、永井選手の名古屋グランパスでの年棒は1500万円、小野選手の年棒は600万円でしたから、2人に払う年棒合計は多くて5000万円くらいでしょうか?スタジアムに来て、チケットを買い、お土産を買って1万円使ってくれる人が年間5000人いると仮定すると、年間試合数は約50試合くらいになるでしょうから、1試合当たり100人が見に来てくれればブレイクイーブンです。日本のスポンサーが2000万円でも支払ってくれれば、1試合あたり30人で損はしないですね。2億円の移籍関連費用ですが、この二人が他チームに移籍するときに回収できる算段で移籍金を設定するはずです。3-5年間で他チームに移籍させると仮定すると、年間16%の金利を考えれば、二人で3‐4億円の移籍金を設定すれば、チームの負担はなしで、それより高い移籍金を得ることができれば、チームにとっては利益となります。

チームの思惑は別として、永井選手や小野選手のチーム選択についても考えてみたいと思います。

前述したとおり、永井選手の年棒は1500万円、小野選手は600万円です。新しいチームでの年棒はUPしたでしょうが、それほど大幅な昇給は考えにくいと思います。では、なぜ、「神奈川県リーグに所属する大阪にある企業がオーナー」のチームに移籍したのでしょうか?

ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス、フランスのビッグクラブにステップアップするためだと考えられます。では、なぜ、名古屋や横浜Fマリノスではダメだったのでしょうか?それは、ヨーロッパクラブの関係者の目に留まる機会が圧倒的に違うこと。また、ヨーロッパのクラブ関係者にとっては、日本人が主体の日本サッカーでのパフォーマンスを評価するより、ヨーロッパサッカーでのパフォーマンスを評価するほうが、比較対象が明確でより現実に近いことがあげられます。つまり、両選手の移籍は、年棒よりも土台に乗ることを優先した結果、実現しているのです。

でも、チャレンジはたくさんあります。ヨーロッパには、たくさんの優秀な選手が集まります。そして、文化的にも、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語が飛び交い、日本の文化とは大きく異なる中での競争になります。永井選手が川島選手に通訳をお願いするに当たり、「チームに早く通訳を付けてほしい」とコメントしていましたが、通訳を雇って、リーグ戦に帯同をさせるには、年間1000万円以上のコストが余分にかかります。私がチームの関係者なら、1000万円かけて、永井選手に言葉を勉強してもらいたいと思います。なぜなら、そのほうが、チームにとっても安上がりだし、永井選手にとっても大きなプラスになるでしょうから。

表に出ている部分からいろいろと思惑などを想像してかきましたが、サッカービジネスとはそういうものです。すこしでも、実態について広く理解いただければ、自ずと進むべき道が選択しやすくなると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポーツ育成に残る深い影

桜ノ宮高校の体罰事件を発端に、様々なところで様々な議論が活発化しています。これは第二次世界大戦後の日本が本当の意味で、文化的にプロスポーツを受け入れて行けるかどうかという必要な移行プロセスだと思います。

先日、高校サッカーで有名な某公立高校サッカー部でキャプテンを務めていた方と話をしているとき、やはり「体罰」の話題になりました。サッカーでもやはり、強豪校には体罰がつきものだったというのが彼の認識でした。彼も、教えられたことができないとか、ふがいない試合をしたとかいう理由から、こぶしで殴られたり、掌底突きをされたり、蹴られたりした経験が一度や二度ではないそうです。

彼が体罰を受けた経験の描写を聞いていると、先日、飛行機の中でみた映画「硫黄島からの手紙」を思い出しました。その映画自体には、それほど興味も感動もありませんでしたが、軍隊教育というものを久しぶりに生々しく感じた映画でした。彼は、その軍隊教育に近い体験をしてるんだなぁ・・・と、ふと思いました。

映画の中では、2人の憲兵が反戦主義者がいないかどうか町中をパトロールして、国旗をちゃんと高く掲揚できていない家をみつけて厳しく指導するシーンがありました。その家人に憲兵隊の兵隊が話をしているときに犬がやかましく吠えました。すると、その憲兵の上官が、「お国を守る憲兵隊の命令伝達を邪魔する犬は始末しろ!」と、下士官に犬の殺害を命じたのです。下士官は、「はっ!」とばかりに犬を裏庭に追っていき、空砲をうつことで上官の命令を実行したように見せかけました。上官のもとに戻って、「犬を始末しました」と下士官が報告した直後、犬が再び吠えている声を上官が聞くことになります。上官は、その家に再び乗込んで犬を銃殺し、そして下士官のもとに戻るとその下士官をひたすら殴りつけ、憲兵隊から硫黄島の戦地へ二等兵として追いやってしまったのです。

日本が戦争に勝利するために、果たしてこの犬は何か邪魔をしたのでしょうか?そんなはずはないですね。加えて、この下士官は、軍紀違反で憲兵隊を首にされなければならなかったのでしょうか?

下士官にも考える頭があり、この上官命令がどれほど馬鹿げているかがわかったうえでの行動だったと思います。では、上官はなぜ、そんな馬鹿げた命令をしたのでしょうか?下士官が命令に従うかを試す?町の人達にから憲兵が畏怖させる存在にする?それとも、この上官のただの嫌がらせ?一体なんなのでしょうか?答えはわかりませんが、軍隊を形成して軍紀を維持していくためには、本当の上官というのは命令を与えるにあたり、下士官にその重要性を説明して納得させるか、または、上官は絶対に馬鹿げた命令はしない、絶対間違った判断はしないという絶対の信頼感を下士官が上官に対して持っているのどちらかしかないと思います。上官に値しない人物がその地位につくと、こういう悲劇が起こるのだと思います。

1945年に終戦を迎えてから68年が経過します。戦後教育が1948年から始まったと仮定して、当時30才の先生だったと考えると、その先生たちは95才ですね。ほとんどの方が亡くなっているでしょう。この先生が定年退職するまでの30年間に直接、教育した子供たちは、6才から教育を受け始めると仮定すると、1942年‐1972年生まれまでの子供たちです。つまり、2013年の今年、41歳を迎える方々より年齢が上の世代は、戦前に教育をうけ、戦後、指導者として、新たに戦後の教育を実践しようとしてきた指導者に直接、育てられた世代といえます。直接と言わないまでも、その指導者の影響を色濃く受けた指導者に育てられたと言っても過言ではないでしょう。

文化や知識の観点では、積極的に戦前と戦後の教育は分離されようとしてきました。しかしながら、体育やスポーツに関しては、育成の考えや手法については戦前、戦後という考えは文化や知識の観点ほど意識して区分けされていません。そういった意味で、戦前の軍隊教育、軍紀の遵守といった手法が、現在も体育やスポーツといった分野では、影響を色濃く引きずっているのではないかと思います。

さて、プロ野球やプロサッカーというスポーツ職業が存在する今日、現在のプロ選手に求められるものは、チームや監督の指示に言われた通りに従い、言われた通りのパフォーマンスを発揮することでしょうか?

特にサッカーの場合、ゲームが途中で中断されることは極めて少なく、刻々と変わる状況のなかで個々の選手がその場その場での最適な判断を求められます。軍隊教育や軍紀の遵守を前提にした育成を受けた指導者で、その指導者が実践してきた育成方法では、プロサッカー選手を育てるのに限界があるのは「なるほど」と思えませんか?だからこそ、さまざまな育成プログラムを子供たちにも、指導者の皆様にもどんどん提供していきたいと考えます。

ちなみに、冒頭の体罰をした先生は今何をしているかというと、協会関連の仕事をしているそうです。体罰をしていた人に、声高に「体罰はダメだ!」と言われても、やはり説得力には欠けてしまいますね。大阪の橋本市長のように、組織を挙げての大々的な転換宣言が「体罰」のみならず、「育成方法」についても必要ではないでしょうか?

 

 

 

キャリアプランから考える所属チーム選択

平成25年1月11日、横浜Cのユース所属:木下康介選手が、ドイツ ブンデスリーガのフライブルグとプロ契約を結んだという記事を目にしました。

木下選手はU-19日本代表選手で身長188cm、スピードをもって足元の技術が素晴らしいストライカーとして高く評価されたそうです。記事によると、昨年夏、前シーズン イギリスプレミアリーグ覇者のマンチェスターシティのテストを受け、直後にドイツに渡ってフライブルグの練習に参加して、そこでのパフォーマンスを評価されての入団とのことです。

木下選手には、マンチェスターシティも興味を示していて、フライブルグとの争奪戦になったとか。

木下選手は、昨年6月1日に横浜Cユース所属選手ながら、トップチームの試合に参加できる第二種選手登録をされていました。しかしながら、昨年のJ2での試合出場機会はなく、今回の移籍が実現しています。

 

- J2の横浜Cでは試合に出れない現実

- プレミアリーグ覇者のマンチェスターシティからのオファー

- ブンデスリーガ―のフライブルグからのオファー

 

みなさんが木下選手のご両親なら、どういう選択をしますか?

 

もっともレベルの高いクラブといえば、マンチェスターシティだと思います。でも、木下選手は、J2横浜Cでもなく、マンチェスターシティでもなく、フライブルグを選択しました。どうしてなんでしょうか?

おそらく、

- マンチェスターシティに入団しても、トップチームの出場機会は極めて少なく他のチームへレンタルされる可能性が高い- フライブルグでは即レギュラーといかないまでも、トップチームへの出場できる可能性がマンチェスターシティより高く、かつチーム事情及び育成方針が自分に向いている

- ヨーロッパでプレーしたほうが、日々、自分のプレーが色々なチームに見てもらう機会が多いので、仮にフライブルグでパフォーマンスがでなくても、また、想像以上にいいプレーをしたとしても、他のチームからのオファーが期待できる

といった理由ではないでしょうか?

 

U-19日本代表で、身体的にも恵まれている木下選手でさえ、J2では試合機会が与えられない場合があり、また、同じタイミングでヨーロッパの強豪クラブからのオファーが2つ届くことがあるのです。絶対的な評価って本当に存在しないのがサッカーですね。では、選手としてチーム選択には何が大切なのでしょうか?

- 試合に出ること

- チームの試合が、たくさんのチームの注目を浴びる舞台であること

- 自分の選手としてのキャリアプランのどこに位置付けられるのかを明確に理解していること

そして、チーム側は

 

- 即戦力または将来的に成長すると評価するか

- 即戦力の場合は、チームでの育成を検討。また、将来的才能を評価した場合は、出場機会があるクラブへレンタルして実戦で結果を出せるか見守りながら、パフォーマンスが高い場合は、自チームに呼び戻す、または、高値で買いたいというチームがこないかを待つ。結果がでなければ契約更新しない。

と考えます。

選手側とすると、選手としてのキャリアプランを考えて、所属チームを選んでいくことがとても大切ですね。