私のような経営者が、「スペイン」という縁もゆかりもない国の「国技サッカー」に携わり始めて2年が経とうとしています。あれよあれよで、サバデルの株式を取得することになってから10ヵ月。今、報道されていることとはあえて「無関係」と強調しておいて、サバデルを通してみた、スペイン2部Aと2部Bの経営についての考えと、私の考えるビジョンをシェアさせてもらおうと思います。
サバデルの歴史は1993-1994シーズンから18シーズン連続で2部Bと3部で過ごし、2011-2012シーズンで19年ぶりに2部Aに返り咲いたクラブです。
ここで知っておくべきことは 「2部B=アマチュア」、「2部A=プロフェッショナルリーグ」ということです。
つまり、2部Bは、町のアマチュアクラブ。みんなで会費を募ってユニフォームを揃えたり、遠征にでかけたり、協会への登録費用を払ったり。ほとんどが、経費の捻出を必死で行って、年間のオペレーション規模は約5000万円程度。
2部Aはプロフェッショナルクラブ。つまり、スペインプロフェッショナルサッカーリーグに所属して、放映権や助成金が分配され、クラブがお金を稼ぐために存在するクラブ。年間のオペレーション規模は約5億円。
2部Bのチームって、近所の町クラブなので、どういう人から会費を集め、その会費をどのように使うか。サークルの庶務さんみたいにイメージですね。ただ、サークルのように規模が年間10万円程度ではなく5000万円だから、どうしても信用できる名士(お金には困ってない、時間のあるいい人)が会長をしている傾向にあります。この場合、「経営」というよりは「管理」が仕事になるのです。
2部Aのチームは、オペレーション費用が5億円あるわけですから、それを資金として収入を増やし、選手の補強をして1部を目指すという「経営」が求められるわけです。ちなみに1部の運営資金は一番少ないチームで約25億円以上の規模となるので、2部Aと比較しても5倍以上です。
私はよくクラブ経営をレストランビジネスに置き換えて話をします。想像してみてください。年間5000万円の売上のレストランが2部Bのチーム。年間5億円の売上のレストランが2部Aのチーム。年間の営業日が300日と仮定すると
2部B = 年間5000万円 = 16万6千円/日の売上
2部A = 年間5億円 = 166万円/日の売上
一日の売上が16万6千円の店と、166万円の店では、経営者、支配人、キッチン、料理人のやることが大きく違うことが想像できませんか?
2部Bのチームの場合、それは町クラブですから、クラブ経営者は市役所のなかの食堂経営をボランティア(無給の名誉職)で任されている状況と置き換えてもらえばいいんじゃないでしょうか?チームが2部Aに昇格することは、突然、市役所の食堂がの売上が10倍になったのと同じことが起こります。おなじ料理なのに、突然、店がいつも一杯になり、客が今までの価格の5倍以上の値段を払い始めたのです。ボランティア経営者として、市役所の食堂を予算のなかで市民の胃袋を満たす経営をすればよかったのに、突然、営利目的の「レストラン」に食堂も自分自身も変わらなければならなくなったのです。
経営者は引き続きボランティアですが、いろんなことが起こります。お客を増やすために店舗を広げてみてはどうか?TVにCMを出してみては?店舗を隣町にだしてみたはどうだろう?食材は、日本から取り寄せてみては?いろいろな判断、誘惑が突然、降りかかってきます。
そういう状況の変化に、経営者自身も変わる人もいれば、変わらない人もいる。そして、その変化がレストランをさらによくする場合もあれば、ダメにしてしまう場合もある。
食堂に通っていたお客さんにもいろいろな心の変化がおきます。前の方がよかった。いや、もっと大きくいいレストランになってほしい・・・
どれが正解かはわかりませんが、私が一つ思っているのは、突然、大きく変わることではなく、我々は一緒にステップバイステップでともに進むことです。なので、来季に日本人監督、日本人GM、日本人選手2名を同時にとり、出場保証する・・・ まったく、私の構想外です。
ステップバイステップ。
サバデルの人達の1部昇格の夢に、我々の夢を重ね合わさせてもらう。それを実現したいと思います。
引き続き、応援をよろしくお願い致します。