Jリーグクラブの副社長という仕事

昨晩、Jリーグに属するチームで3年間副社長を務められた方と食事をする機会をいただきました。ご本人は他業種からの転職で、オーナーからチームの面倒をみてくれと頼まれて副社長に着任されたそうです。ただ、サッカーの経験は皆無で前職の経験から経営再建の手腕を買われての転職だったとのこと。ほぼ、4時間ちかく、Jリーグのクラブ経営とそしてサポーターのみなさんとの向き合い方について本当に面白いお話をきかせていただきました。

その中でも印象的だったのが、「サポーター’s ミーティング」です。いつも熱烈に応援してくれるサポーターのみなさんとの懇親会という名目ですが、現実は、参加いただいた人数の数だけ、「GM兼監督」を自称される方々とのやりとりが延々と朝まで続くんだそうです。

「来期のFWの補強については、どう考えているんだ。絶対に4-2-4より3-4-4システムを採用すべきだ」

「あそこのA選手の選手交代はタイミング早すぎなんでは?交代させるとしてもA選手でなく、B選手でしょ」

「副社長のあなたがミーティングにでてくるのはいいけど、監督に直接話がしたいから、次は監督を連れてきてよ。ちゃんと、伝えることは伝えておかないといけないから」

なんて、やりとりは毎回だそうです。確かにみなさん、大切なサポーターなんですが、みなさん一人一人の意見をチーム強化に反映させるわけにはいかないし、戦術、ゲーム戦略はすべてサッカーのプロに任せて1シーズン闘っているわけですから、そこにはいくら副社長とはいえ、たとえ社長でもなかなか踏み込めないところですよね。

料理が自慢のレストランで、経営者が料理の責任をもっているチーフシェフにむかって、料理の味付けや素材がどうだとケチをつけるようなものじゃないですか。

連敗が止まならいとき、ゲーム終了後にまったく帰ろうとしないサポーターたち。

「監督をつれてこい!! なんなんだ、今日のゲームは!!!」

「何回、負ければ気が済むんだ。社長出てこいよ、いるんだろう!!」

サポーター側のゴール前にでていってサポーターを説得して、帰ってもらうのも副社長の仕事だったそうです。

また、Jリーグの観戦マナーだそうですが、アウェイゲームで大勝した際、アウェイチームの応援マナーとして、応援する選手たちがベンチに帰るまではどんどん勝利を祝っていいそうですが、選手たちがベンチに戻ったあとも騒いでいるとマナー違反という事でホームのサポーターと大喧嘩が始まるそうです。例えば、この喧嘩で負傷者がでたりするとチームがサポーターに対して運営協力のお願いを十分にできていないという理由から、Jリーグから罰金が科せらるそうです。こんな場合も、サポーターミーティングで、「ただでさえ懐事情が厳しいのに、こんなことで無駄な出費をチームがすることになれば経営状況が悪化し、チームが倒産、消滅なんてことになりかねない。ほんとにチームを愛しているなら、しっかりわきまえてくれ!」と、今度は副社長がツバを飛ばしてサポーターを説得し、だいの大人のサポーターたちが涙を流して頭をさげ、「すいません!! 二度としません!!」と謝ってもらった経験もあるそうです。

他にもここには書けないようなお腹を抱えて笑ったり、涙が出るようなお話もいただきましたが、最後にひとつ質問しました。

「笑いあり、涙あり、そしてほんとうに大変な3年間のJリーグチームの副社長生活ですが、また、オファーがあったらJリーグのチームで仕事をしたいですか?」

「はい、もちろんです。あそこに戻れるなら、どんな仕事でも喜んで、今の仕事を辞めて飛び込みますよ」

とのことでした。

サッカーの魅力に取りつかれた先輩との楽しい食事でした。